かぶせ茶は手間と暇(いとま)を惜しまず

かぶせ・ことばの由来

 「かぶせ茶」という呼び方はお茶の木に遮光幕をかぶせて栽培することに由来しています。収穫の約一週間前に直射日光を遮るために黒いネットで覆うそのひと手間で、渋みの元であるタンニンを抑え、旨味成分のテアニンの含有量を増化させるのです。かぶせ茶も緑茶の一種ですが、中でも上級なものが玉露と言われるものになり一ヶ月ほど遮光します。

 

露地物の産地・静岡

 緑茶の生産量や茶園の面積が日本一の茶処静岡では、その温暖な気候と地理的要因から露地物の栽培に適しているため、かぶせ茶はほとんど生産されていません。生産者も露地物(遮光しない)に拘っており、それこそ静岡茶の特徴であると言えます。ただし山間部では霧のような雨も多く、日差しを遮ってしまうため、天然のかぶせ(遮光)状態になっているという見方もできます。

 

鹿児島茶・かぶせでブランド化へ

 近年では九州地方のお茶が市場に多く出回るようになってきました。生産量日本第2位の鹿児島県は新茶の時期の気候も温暖で安定しているため、静岡県よりも早く市場に出回ることも相まって、静岡の卸問屋や茶商が第2の拠点を置いて生産を見守っています。静岡茶が霜の被害などで不作の場合は鹿児島茶を買うためです。それだけ静岡茶と鹿児島茶は日本茶の重要拠点なのです。  鹿児島県で多く生産されている代表的な品種と言えば「あさつゆ」と「ゆたかみどり」になります。そして実は鹿児島では概ねかぶせの技法を取り入れております。これは露地物で日本茶のブランドを確立している静岡茶に対抗するために、静岡茶との違いを明確にしようとした鹿児島の戦略であります。先述したように遮光することにより旨味が増します。近年の日本食の「旨味」ブームに乗って鹿児島茶のブランド化も図られてきたようです。

 

かぶせ茶の聖地

 かぶせ茶といえば伊勢(三重県)、かぶせ茶の生産量については、全国1位であります(2009年度統計)。これは、三重県全体の生産量の約24%を占めています。特に、四日市の水沢地区には茶畑が多く、水沢地区の茶栽培農家数は1960年代以降減少していますが、2000年(平成12年)時点で全農家306戸のうち、約92%に相当する281戸が茶栽培を行っています。伊勢茶の知名度は低いと言えますが、栽培面積・荒茶生産量ともに三重県は第3位です。これは戦後に茶栽培の建て直しが滞ったためで、結果として伊勢茶は知名度のある静岡茶や宇治茶の原料茶となってしまいました。しかし、近年需要が高まっている加工用原料茶(アイスクリームなどに使用)には全国第1位のシェア(82%)を持っています。

 

かぶせ茶は手間と暇(いとま)を惜しまず

 かぶせ茶の特徴といえば「旨味」です。そのために新茶などの青臭さがある時期は味が乗らずにポテンシャルが発揮されません。そのために1年寝かせた茶葉をブレンドしながら味を整えたりすることもあります。また、かぶせ茶はブレンドのみならず栽培にもとても手間がかかります。畑の状態を逐一観察しながら、虫の除去や肥料の投与を行います。逆に言いますと手間と暇(いとま)をかけた畑には美味しいお茶ができるということです。

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