お茶と急須のある風景

急須いまむかし


玉雲堂のコレクションより。(上)中国産の急須。取っ手が注ぎ口と反対側につく、後手(あとで)のものが主流。(下)東南アジアなどの変わり急須。

江戸時代には「きびしょ」、津軽では「きびちょこ」と呼称されていた急須は、五つの部品を組み合わせた、非常に繊細で高度な製造技術が必要とされる道具です。それゆえに日本茶文化の深さそのものをも表しているといえます。

一方で、日本人のライフスタイルに合わせて、柔軟に変化してきた面もあります。

何かと忙しい現代では、短時間でも味と色が出やすい深蒸し系のお茶が飲まれる機会が多くなりましたが、茶葉が細かく茶こしから漏れ出てしまうため、目が小さくできるステンレス製の茶こしを備える急須が主流となりつつあります。

陶磁器製の茶こし 永いあいだ親しまれてきた伝統ある方式。淹れると多少茶葉が出ますが、それが本来のお茶の姿でもあります。「茶柱が立つ」のは目が大きめだからこそ。
ステンレス製の茶こし 深蒸し茶の細かい茶葉でもしっかりガード。金属臭が感じられる場合もありますが、水質と湯温を調整すると抑えることができます。

ひと昔前までは、どのご家庭にも急須の収納にふさわしい茶箪笥がありましたが、若い方にも自然にお使いいただくためには、モダンなインテリアにマッチする急須のデザインを生み出していくことが必要かもしれません。

玉雲堂と急須

私たち玉雲堂と急須との関係は古く、先々代が古物商を営んでいたころから始まりました。

以来三代にわたり、国内にとどまらず世界各地から古今の急須をコレクションし、お求めやすいスタンダードなものから、急須作家の手によるアート性の高い作品、珍しい一品ものの蒐集家向けアイテムまで、常時300種類以上を取り揃えております。

近年では、製品としての急須のあり方について、お客さまにもっとも近い立場としてメーカーや窯元とも直接意見交換をし、さまざまなアドバイスをさせていただいております。

急須のフタを紛失しても本体を使い続けていただけるよう、フタだけのストックもございます。気分に合わせて、「フタの着せ替え」もいかがでしょうか?

質のよい土を使用して作られた急須であれば、使えば使うほどお茶の色が乗って、味わい深い色になります。ぜひお手持ちの急須も、末永く大切にお使いください。きっと世界に一つだけの、素敵な色合いがあらわれることでしょう。