・青春物語
こんにちは!
何と、今週末は三連休ではありませんか!?
もうすぐ夏休みだし、連休もあるで、学生さんは盛り上がっているのではないでしょうか?
さて、夏休み・長期休暇が近づく今日この頃です。
今回は、玉雲堂物語(フィクション)です。
玉雲堂はどんな物語を紡いでいくのでしょうか?
長いのでゆっくりお読みいただければ幸いでございます。
・夏休みの思い出
たくやは、グラスにいつの間にかついていた水滴をそっとぬぐった。
グラスに氷を入れて冷茶を楽しもうとしていたのだが
なぜか、グラスから目が離せず、時間が過ぎた。
そうしているうちにみるみる氷が解け、外気との兼ね合いで
静かに音もなく水滴は現れては落ちていく。
あの日は・・・
今日のように、風が爽やかな日だったな・・・とたくやはあの日を思い出しはじめた・・・
もうすぐ夏休みだな~
解き放たれた校舎の窓から抜けていくのは風ではなく
生徒の期待に満ちた声だった。
うだるような暑さの中で唯一生徒の気を紛らわしていたのは夏休みという名の希望だった
たくやにとっても夏休みは待ち焦がれていた連休であった。
売店で買ったジュースを飲みながら、たくやは一人思案にふけっていた
「お茶のほうがおいしいよ?」
夏休みという言葉が室内を占拠しているなか、一つだけ異質な言葉が耳に入った
振り返ると、みどりが友人に笑いながら問いかけていた。
たくやとみどりは、あまり話したことがない
文化祭の作業で少し話した程度で、お互いをよく知らないのだ。
今の今まで、みどりに対し何の感情もなかったが
夏休みを前にたくやは、初恋をした・・・
話をしたい!
でも話題が何もない・・・
不安以上絶望未満の心もちの中、たくやはどうしたら良いか頭をかかえた
「お茶の飲み比べ大会が、学区の町内会であるんだよ!?楽しそうじゃない?」
「え~何それ。みどり渋すぎじゃね(笑)」
・・・
これだ!!!
たくやはもう心の中でお茶飲み比べ大会に参加を決めた!それはもうすごいスピードで。
この話題なら、みどりと話せるかもしれないと思い
半年分の勇気を振り絞って
たくやは席を立ちあがった。
「木村さん(みどり)、こんにちは、お茶の飲み比べ大会の話が聞こえたんだけど、木村さんも出るの?」
え?「も」って・・・たくやくん出場するの?
「うん。お茶に興味があってさ(←口実)」
「そうなんだ~。私最近お茶ってとってもスタイリッシュだなぁ、って思い始めて・・・お茶っていいよね?」
「うん(←即答)」
・・・
みどりの前ということもあり
話をつい盛りすぎたたくやであった・・・
どの辺を盛ったかというと
お茶の淹れ方を知っている、産地別の味が少しわかる、急須の手作りか否か見分け方がわかる・・・である。
「・・・全くわからん(汗)」
その日から、たくやは近所のお茶屋さんに行って
お茶のいろはを教えてもらった。
お茶屋さんは敷居が高いイメージをたくやは持っていたが、今はそれどころでないため
一か月分の勇気を出したのだ。
自宅でも、お茶の勉強を怠らなかった。
学校の勉強はほとんどしないたくやがいきなりお茶の勉強を始めたので両親は不思議に思った。
ついにその日がきた・・・
夏休みの前半をお茶に費やした・・・いや、みどりに費やした・・・すごいね!!!と言ってもらいたいがために。
たくやは、緊張とお茶の飲み過ぎで寝不足だった。
朝食を軽く済ませ、たくやは自転車で会場に向かった。
公民館には、みどりをはじめ、近所の子どもと保護者・スーパーなどで見たことがあるような年配の方が大勢いた。
「たくやくん、今日頑張ろうね!」
みどりが笑顔でたくやにエールを送る。そのエールがたくやにとってはどんな栄養ドリンクにも勝る一声だった。
「お、おう頑張ろうな!」
町会長の掛け声でお茶飲み比べ大会が開催された。
周囲は和やかなムードだったが、たくやは負けるわけにはいかないので真剣にお茶と向かい合った
付け焼刃知識とはいえ、たくやは次々と課題をこなしていった
手ごたえがある!いける!!!
たくやは確信のようなものを実感していた。
これもわかる、これもだ!
・・・
結果発表を行います~
優勝は・・・
魚屋さんの田中次郎さんです~おめでとうございまーす!
「終わった・・・」
心でつぶやいたはずが、声に出てしまうほどの終わった感がたくやを支配する。
わーという歓声が右から左の耳に流れ、田中さんが喜んでいる光景に何の気持ちも湧かない
・・・
結果、たくやは6位だった。
会場のみんなに冷茶が振る舞われた。
たくやは会場を離れ、公民館の縁側で一人ぽつんと空を見つめていた。
すると
「たくやくんお疲れ様~」
みどりの声がふいに聞こえた
振り返ると、冷茶を持ったみどりが笑顔でこっちに向かってくる
「隣座っていいかな?」
「え!?いいよ!!」
・・・
10秒の無言が1分にも感じられた
「たくやくん大人が一杯参加してる中で6位ってすごいよ!やっぱり、たくやくんてお茶に詳しいんだね。 すごいなぁ・・・」
空っぽの心に彩が戻りはじめたたくや。
「私は、22位だったから全然だめだったけど、お茶ってやっぱりいいね♪」
さっきまで、冷茶の存在を忘れていたたくやだったが、グラスで輝くお茶を少し飲んだ。
涼しい爽やかな風がそっと流れる。
ふと、ごく自然にみどりは言った。
「私の彼氏も参加すればよかったのになぁ・・・今度、おいしいお茶もって遊びに行こう!ねえ、たくやくん、持ち運ぶとしたらどんなお茶が・・・」
みどりの話が全くはいってこない
みどりが何か言っているなか、自分は何か返事はしているみたいだが・・・
その間、ほったらかしされた冷茶のグラスからは、まるで雨のように水滴が落ちて行った・・・
たくやは家に帰り、じぶんが失恋した事実を素直に理解した。
涙は不思議と流れなかった。
まるで、自分の涙を代わりになにものかが代弁してくれたかのように・・・
月日は流れ今に至る。
グラスの水滴をふき取ったたくやは冷茶を飲み干すと、歩き出した。
さぁ、茶道部夏休み強化合宿(花火鑑賞もあり)に行ってくるかー!!!
空は曇りなく、たくやの心のように明るい青でした。
いかがでしたでしょうか!?
長い文章読破お疲れさまです!
最後までお読みいただきありがとうございました!!!
失礼します!